筋トレ

年齢と共に変化する身体と伸びるアスリートのスポーツ寿命

最近筋トレをライフワークにしている自分に共感できそうな興味深い本を読みました。

それは「アスリートは歳を取るほど強くなる」ーパフォーマンスのピークに関する最新科学 (原題は「play on」という本で著者はロスアンゼルスタイムズの副編集長ジェフ・ベル子ビッチ(草思社文庫)です。

まずタイトルに興味をひかれました。日本の出版社が日本の中高年向けに考え出したタイトルだろうことは原題を見てすぐにわかりました。

思わず購入してしまったのでまさに出版社の思う壺でした。

しかし読んでみると結構面白く数多くのアスリートや医療従事者にインタビューしています。著者が構想から出版まで4年かかったのも肯けます。

このブログでは自分に関連するものだけピックアップしました。中には「それはどうかな?」「違うんじゃない?」と思えるようなこともありましたが私の方が間違っていることも十分あり得るのでそれもいくつか列記しました。

またこの本に出てくる数値は主にアメリカ人を対象にした数値であるので日本人にそのまま当てはまるとは限らないことはあらかじめ明記しておきます。

年齢とともに変化する身体

・50を超えた女性の約3分の1は腰、背骨、前腕が骨粗しょう症になる。

・筋肉痛から捻挫、ただの切り傷や打撲等までどんな傷も治りが遅くなる。生物学者は成長ホルモンの生産量が減ることと、修復を担なっている特定の幹細胞の機能低下に何らかの関係があると考えている。

・食べたタンパク質を筋肉が新しい筋線維に変えることも難しくなっていく。同化抵抗性と呼ばれるタンパク質の合成率が低下する現象のせいだ。

・45歳を過ぎると、変形性関節症がよく起こるようになる。関節、特に膝の関節で衝撃を吸収する役目の軟骨が摩耗して、再成長を助ける細胞の働きが悪くなると起こるのだが、これもまたその理由はあまり解明されていない。

・反射神経は24歳頃が一番よく、そこからはゆっくりと遅くなっていく。それは神経信号が伝わるスピードが遅くなっていくことと関係がある。末梢神経周辺のタンパク質でできた神経を守る鞘が劣化するので刺激が効率よく伝わらないのだ。

こうした余計な「経路上の妨害」もバランスをとるという単純な運動能力を保つのにも高齢者の場合は意識して努力をしなかればならない理由のひとつである。

加齢による変化は運動で回復できる

・加齢の最悪な兆候ー認知機能の低下、筋力の消耗、骨の脆弱化、循環器障害ーは、熱心かつ頻繁にトレーニングをしている人には同じようには起こらない。

・長い間、走るのは心臓や肺の健康には良いが膝の軟骨には悪影響を与えると当然のように考えられていた。けれどもここ数年の研究で、それとは正反対のものをよしとする証拠が次々に示されてきている。

軟骨に一定のパターンで繰り返し力を加えると軟骨細胞が刺激され軟骨の形成が促進されるということがわかってきた。

ランニングもそうした運動でありサイクル負荷と呼ばれる。縄跳び、スキーのモーグル、ウエイトを持ってのスクワットも同様の効果がある。

水泳やサイクリングやウォーキングでは同じ効果は得られない。

たとえ走る人のほうが細身の傾向があるという事実を差し引いたとしても、走らない人より日常的に走っている人のほうが変形性膝関節症の発生率が低い理由はサイクル負荷によって説明できるだろう。

➡️ランニングによる膝痛の問題は日本でもありランニングは膝に悪いとか悪くないとかの議論も以前からあるようです。

しかし主にアスファルトのような硬い路面を長年走りつづけることは膝関節のみならず足首の関節や股関節にも悪影響を与えることは間違いないことでしょう。

加えて女性マラソンランナーには骨粗しょう症が多いと聞きます。

スキーのモーグルでは半月板損傷や靭帯切断などは選手自ら職業病と言っています。

しかし膝関節に刺激を与えることで軟骨が再生するということは以前から言われており私の下記ブログにも書いています。ただまだ実証データが少ないので今なお研究中のようですが。

参考記事:「すり減った関節軟骨を再生するジグリング(jiggling)とは?

アスリートは長寿か短命か?

・統計的にはトップアスリートは他の人よりも長生きすると示されている一方で、彼らはまた急速に老化を経験するとも示されている。

矛盾するようだが、彼らはもっとも健康に生きながら、早い時期から老化していくという状態になるのである。

・身体に積み重なっている極度のストレスが、何十年か後の高齢になったときに衰えー脆い骨、関節炎、認知症ーを経験する原因になることも多い。

「ある意味アスリートは他の人よりずっと速く歳を取るー彼らは80歳ではなく40歳でもう老人だからね。」とキム教授は言う。

➡️一般の会社員よりもプロ・アスリートの引退はかなり早く、早ければ30歳前後遅くとも40歳前後になります。

アメリカのトップアメリカンフットボール選手にはその身体の損傷許容限度から30歳で引退し以後はリハビリ生活という人もいるのです。

私は日本のオリンピック選手やプロ野球、プロサッカー選手が引退後どのような身体変化(怪我などによる後遺症など)がありその身体変化に伴いどう生活して行くのかに興味があります。

過酷なトレーニングをしない限りトップ・アスリートにはなることはできません。それに耐えてきた身体は引退後どうなるのかのひとつの答えがキム教授の言葉でしょう。

筋肉のためにタンパク質だけは必須

タンパク質を取るタイミングが量と同じくらい重要なのだそうだ。

一度に約25グラム以上のタンパク質を摂取してもただ余分な尿素、つまり尿として排泄されるし、腎臓結石の形成に役立つ副産物を生成することにつながるだけだ。

少なめのタンパク質を3時間ごとに1日を通して食べうほうがいいのだ。

それから眠りにつく前に摂取したタンパク質は、タンパク質合成の強化に特に効果がある、という説得力のあるデータがある。

・タンパク質をもっと食べることに加えて、特に熟年アスリートにとってかなり有望に思える栄養分がもうひとつあるーそれはゼラチンだ。

最近の研究ではそれを摂取することでさまざまな軟組織の怪我の防止と治療に役立つという証拠が出されている。

ゼラチンは牛、豚、羊のガラの部分を煮詰めて靭帯、腱、軟骨、皮膚の中にあるコラーゲンを溶かして液状化して作る。そのコラーゲンを食べることで、身体に自分自身の新しいコラーゲンを作ることを可能にするタンパク質が供給されるのだ。

いろいろな研究から怪我でリハビリをしている期間中にゼラチンを補填することが、前十字靭帯の再構築、アキレス腱切断後のプレーへの復帰を早めるという結果をもたらすこともわかっている。

➡️インタビューでは1回のタンパク質摂取量は25gが上限のように言っていますが、その研究データは20g〜40gまで幅が広いのが特徴です。まさに個人差があり加齢に伴ってタンパク質の吸収率が低下するので高齢者はより多く摂取しなければならないとも言われています。

➡️このゼラチン摂取の有効性を説いている中心人物はカリフォルニア大学デーヴィス校の生物学者であるキース・バールのようです。

コラーゲンは口から入れても小腸までにアミノ酸に分解されて肝臓で肝臓にタンパク質として再合成され、このうち一部のタンパク質がコラーゲンとなります(詳しくは下記ブログ参照)。

したがってゼラチンを摂取しても体内でそれがコラーゲンになるとは限らないのです。

大学の先生が何を言っているんでしょうか。しかもアメリカのスポーツ界ではそれを信じて肉や鳥のガラを煮詰めてせっせと摂取しているプロ・アスリートがいるとか。

プロテインパウダーを摂取した方がずっと効率的・経済的でしょう。

よくわからない世界です。

参考記事:「コラーゲンを摂取してもアミノ酸に分解されると知っておこう

「手術」と「メンテナンス」はどう違うのか?

・ふつう「メンテナンス」といえば、痛みを起こしたり関節の可動域を狭めたりしている骨のかけら、突起、瘢痕組織の除去、内侍は切れた靭帯や軟骨のギザギザになったエッジの切除などの軽微な関節内視鏡による処置のことである。アスリートは我々が歯の手入れをしてもらいように関節を補修してもらうのだ。

アスリートでない人にはふつうはそのようにはいかない。

生きた細胞を使って治療する

・「PRP療法ー遠心分離機を使って血漿から血小板を分離し、怪我の部位に注射して治療を早める技術ーはコービー・プライアントが2012年に右膝の変形性関節症の治療のためドイツへ飛んだと報じられて以来、アメリカのプロ・アスリートから「万能薬」とみなされている。

・PRPは筋肉や腱の怪我の治療に十分期待できるとされ、最も効果的なプロトコルを決定する研究はまだ進行中であるものの手術の補助的なものとして広く使われている。

何よりも手術と異なって「それに伴うリスクが非常に小さい。」「それで治療を行っても基本的に副作用がないんだ。」

・生物学的製剤を利用する治療のもうひとつ面白い点は、それが実は若い患者よりも年長の患者の方により効果があるかもしれないという珍しい治療法であるということだ。

・軟骨は特に確実に年齢の影響を受ける組織だ。55歳以上の大人の約4分の1は膝の変形性関節症の兆候があり、その約10%は症状が現れている。競技アスリートにおいてはもっと大きな数になる。

・2005年から2010年の期間は、スポーツ医学の世界では(主に膝の)関節の周りの骨に微細な穴を開けるマイクロフラクチャーと呼ばれる治療法に大いに沸いていた。

穴へ血液が浸潤することで大人ではまず自然に起こらない新たな軟骨の生成を刺激するのだ。けれどもマイクロフラクチャーの長期的な成功率は良くないことが後にわかったのだ。

生成された軟骨はスポンジ状の関節内軟骨ではなく、もっと硬い線維質の軟骨で結局できてきたのは数種類の軟骨の複合体で構造的に合わなかった。

・もっと質のいい軟骨は自家培養軟骨細胞移植(ACI)と呼ばれる方法で得られる。

それは2つの工程からなる。まず軟骨細胞すなわち軟骨を生成する大人の幹細胞を膝から採取し軟骨基質から分離して研究室で培養して数を増やす。

次に軟骨細胞がきちんと止まるように膝の皿の下に再移植する。

マイクロフラクチャーよりもACIの方がより耐久性のある組織を作ってくれる。

➡️PRP療法は日本でも一部の整形外科で行っています。ただしまだエビダンスが十分ではないようで保険適用外になっています。

しかしインタビューにもあると通り副作用もなく手術を好まない患者向けにはいい治療法なのかもしれません。

ただしどこまで軟骨が再生するかわかりませんしいつまでその再生が継続するのかもはっきりしません。

私も右膝が登山で変形性関節症になり治療法をいろいろ検討しましたが現在は先述のジグリングの原理でジムのパワープレートで筋トレ後毎回下半身に振動を与えています。筋膜リリース向けですがジグリングの代用にもなると思ってやっています。

15分位フォームを変えてやっているとかなり下半身が軽くなります。

その後でさらに15分程度ストレッチを行っています。

終わりに

この本の著者はスポーツ好きで執筆当時はまだ30代後半ですがもう若くない中年を意識したジャーナリストです。

冒頭にも書きましたがその内容は著者の医療従事者や学者へのインタビューをもとにしており必ずしもそれらが日本や世界で受け入れられているとは限りません。

はっきり言ってジョギングのサイクル負荷理論は信じがたいです。

それでも面白く読めたのは私が筋トレをライフワークとして選んでいるからでしょう。

またスポーツ医学とアスリートの熟練により彼らのスポーツ寿命が確実に伸びています。

年齢を経ることにより失うものと得るものがあるのです。

筋トレが健康にいいとかあるいはその真逆であるとか人によって意見は分かれますが私にとっては筋トレ自体が楽しいスポーツなのです。

筋トレをやっていて本当に良かったと思います。

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