雑誌や新聞などの広告で時々見かけるサプリメントに「コラーゲン」があります。結構大きく宣伝しているようです。
「速攻吸収コラーゲン」「ぷるぷるアミノ酸とコラーゲン」「低分子コラーゲン」「果樹グミコラーゲン」「パーフェクトコラーゲン」「ぷろコラ」「アミノコラーゲン」などなどこれでもかというタイトルが続きます。
おそらくこれらのコラーゲンに関心がある人は女性と高齢者だけでしょう。女性は肌のハリを求めて、高齢者は膝など関節の骨・軟骨の補填に効果があると思っている人が多いのではないでしょうか。
しかしこのコラーゲンの摂取に関してその効果に勘違いしている人がまだたくさんいるようです。
コラーゲンとは
そもそもコラーゲンとは一体どんなものなのでしょうか。
コラーゲンは「皮膚、血管、骨、軟骨、腱、歯などの組織に存在するタンパク質の1種」です。
成人男性の体の約20%(成人女性の18%)がタンパク質でできていますが、そのタンパク質の30%がコラーゲンです。
ここで最初にタンパク質の口経摂取(つまり口から取り入れる)によって体内でどう分解(消化)・吸収されるのかを簡単に説明致します。
タンパク質の分解(消化)・吸収のメカニズム
コラーゲンもタンパク質の一種ですので口経摂取すると他のタンパク質と同様同じ分解(消化)・吸収過程を踏みます。
口から(魚・肉・卵・大豆などのタンパク質)
↓
胃(ポリペプチド<ペプトン>に分解)
↓
小腸(アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドに分解)
↓
小腸の腸管上皮細胞から毛細血管、門脈経由で肝臓へ
・ジペプチド、トリペプチドは上皮細胞内でアミノ酸に分解される
・運ばれる栄養素は必須アミノ酸で一部ジペプチド、トリペプチドのままで肝臓へ運ばれる
↓
肝臓
・非必須アミノ酸の合成
・血しょうタンパク質の合成
・使用済みのタンパク質を分解・再利用
↓
肝臓から心臓へ
アミノ酸は心臓を経由して血管から全身に運ばれる
↓
全身の器官へ
全身の各(細胞)器官で細胞組織固有のタンパク質を合成する(筋肉、皮膚、骨など)
以上からコラーゲンを含むタンパク質は小腸でアミノ酸、ジペプチド、トリペプチドまで分解されて肝臓へ運ばれ、さらに心臓を経由して筋肉、皮膚などの各細胞でタンパク質に合成されるのです。
したがっていくらコラーゲンを口から摂取してもタンパク質のほとんどは一旦アミノ酸に分解されてしまいます。
コラーゲンを摂取してもそのままコラーゲンになるわけではない
つまりコラーゲンを摂取してもそのコラーゲンがコラーゲンとして再生されるとは限らないのです。
コラーゲンを摂取しても筋肉の材料になるかもしれませんし、糖新生と言ってアミノ酸から糖に変換されてエネルギー源になるかもしれないのです。
要はことさらコラーゲンを意識して摂取しなくとも「タンパク質」を十分摂取していれば体内でコラーゲンが合成されるということです。
繰り返しますが「摂取したコラーゲンがそのままコラーゲンとして皮膚や骨になるわけではない」のです。
コラーゲン配合なんていかに無意味でナンセンスだと理解していただけましたでしょうか。
ここでちょっと下記の通り補足いたします。
注1)タンパク質:アミノ酸が50個以上結合したもの
注2)ペプチド:アミノ酸が2〜49個結合したもの
注3)ジペプチド:アミノ酸が2個結合したもの
注4)トリペプチド:アミノ酸が3個結合したもの
注5)必須アミノ酸:20種類あるアミノ酸のうち体内で作ることのできない9種類のアミノ酸。20種類のアミノ酸全てが揃わないとタンパク質の合成ができない。
注6)非必須アミノ酸:体内で作ることのできるアミノ酸(11種類)
コラーゲン自身は非アミノ酸の含有が多いことも知っておきましょう。
注7)ジペプチド、トリペプチドの「一部」はその形を維持したまま皮膚や骨などに到達するという研究報告があります。
コラーゲンペプチドって?
コラーゲンから多くのアミノ酸を切り離して人工的にこれらのペプチド(ジペプチド、トリペプチド)を作り「コラーゲンペプチド」として販売しているメーカーもありあちこちに広告を出しています。
コラーゲン以外にも大豆から作った「大豆ペプチド」などもあります。
ジペプチドやトリペプチドはアミノ酸より吸収力が高いのです。
そのためコラーゲンペプチドのメーカーにとって「アミノ酸よりも皮膚や骨への吸収力が速いですよ」というのが一つのセールスポイントとなっています。
もともと口から摂取したタンパク質はなぜ胃や小腸でアミノ酸などに分解されるのでしょうか。それはタンパク質の分子量が大きすぎてそのままでは小腸管壁につながっている毛細血管を通過することができないからです。
しかしながらこれらのペプチドは一部がアミノ酸に分解されないまま全身の細胞へ到達するという報告がありますが実際にどの程度の効果、つまりどの程度これらのペプチド自身で肌が潤うとか骨が再生するとかいう実証レベルでは依然として疑問符(?)がつくのです。
まとめ
コラーゲンの特徴を知ってるはずの製薬メーカーもコラーゲンを「皮膚や関節に効果がある」サプリメントとして製造販売していることに非常に驚かされます。
よく訴えられませんね。私は完全に「誇大広告」だと思いますよ。
・摂取したコラーゲンがそのままコラーゲンとして機能するわけではない
・コラーゲンはタンパク質の一種
・口経摂取したタンパク質(コラーゲンを含む)は全て小腸でアミノ酸、ジペプチド、トリペプチドに分解される
・ジペプチド、トリペプチドは小腸管壁でアミノ酸に分解されるがその一部はそのまま皮膚や骨などの細胞へ到達されるという研究報告がある
・肝臓では非必須アミノ酸、血しょうタンパク質が作られる
・ジペプチド、トリペプチドはアミノ酸より吸収力が高い
・コラーゲンを口経摂取してもコラーゲンになるとは限らない
・コラーゲンペプチドの効果はまだ検証レベル
・タンパク質は毛細血管を通過できないのでアミノ酸まで分解される
・コラーゲンは非アミノ酸の含有が多い
・タンパク質は筋肉などの各細胞器官で作られる
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