私は本好きですが経済的な理由で滅多に本を買わないようにしています。
その私が最近同じ作者の本を2冊立て続けに買って読んでしまったのはコロナ禍のせいとしか言いようがありません。
精神状態がちょっとおかしくなったのでしょう。
須賀しのぶなんて全く知らなかった
まだジムが休業中の頃時々新宿の紀伊国者書店本店で面白そうな本はないか物色していたのです。
私が購入するとしたらほとんど新書なのですがどれも同じような本で面白そうなものがなかったのです。どの本も2匹目、3匹目のドジョウを狙ったものばかり。
その時目に止まったのが書店員が書いたこの本の宣伝コピーでした。
「何気なく手にとって読んでみると…」云々書いてありました。
よく書店員による一押しの本で今ではメジャーになった書店員の投票で決める本屋大賞なんていう賞までありますがあんな感じです。
私もそれで何気なく手にとってみるとちょっと面白そうなというより私の読書歴からいうと買わないジャンルの本でしたのでたまにこういう本もはいいかと思った次第。
それで何と購入してしまったのです。まさしくコロナ禍のせいとしか考えられません。
その作者は須賀しのぶという女性作家で私の頭の中には全く不在の人でした。
「革命前夜」(文春文庫)
この本は今年になって書き上げたものではなく結構前に書いた本を文庫化したものです。
下記は出版社の作品紹介の引用文です。
バブル期の日本を離れ、ピアノに打ち込むために東ドイツのドレスデンに留学した眞山柊史。
留学先の音楽大学には、個性豊かな才能たちが溢れていた。
中でも学内の誰もが認める二人の天才が──
正確な解釈でどんな難曲でもやすやすと手なづける、イェンツ・シュトライヒ。
奔放な演奏で、圧倒的な個性を見せつけるヴェンツェル・ラカトシュ。
ヴェンツェルに見込まれ、学内の演奏会で彼の伴奏をすることになった眞山は、気まぐれで激しい気性をもつ彼に引きずり回されながらも、彼の音に魅せられていく。その一方で、自分の音を求めてあがく眞山は、ある日、教会で啓示のようなバッハに出会う。演奏者は、美貌のオルガン奏者・クリスタ。
彼女は、国家保安省(シュタージ)の監視対象者だった……。
冷戦下の東ドイツで、眞山は音楽に真摯に向き合いながらも、クリスタの存在を通じて、革命に巻き込まれていく。
ベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツを舞台に一人の音楽家の成長を描いた歴史エンターテイメント。
まあこんな感じの本なのですが冷戦下の東ドイツなんて全く興味がなかったのですが読んでいくと不思議と作中に引き込まれていくんですよね。
非常に読み易い。それに音を文章化するのが実にうまいのです。音楽音痴の私でも「おおそうか」なんて分かったような気にさせるのですから。
須賀しのぶはこの作品で大藪春彦賞をとりました。大藪春彦なんて懐かしい作家ですね。
書店員が感動したからといって必ずしもその本が私を感動させるとは限らないことは過去購入した本が証明していますが、この本は実に面白かったです。
それで須賀しのぶのことをざっと調べてまた買ってしまったのが次の本です。
「また、桜の国で」(祥伝社文庫)
この本も文庫化されていますが、書き下ろしの当時はこの本で直木賞候補にもなりました。
舞台はポーランド。時代は第二次世界大戦前から始まり戦中と進みます。
下記も出版社の作品紹介を引用しています。
一九三八年十月一日、外務書記生の棚倉慎はワルシャワの在ポーランド日本大使館に着任した。ロシア人の父を持つ彼には、シベリアで保護され来日したポーランド人孤児の一人、カミルとの思い出があった。 先の大戦から僅か二十年、世界が平和を渇望する中、ヒトラー率いるナチス・ドイツは周辺国への野心を露わにし始め、緊張が高まっていた。 慎は祖国に帰った孤児たちが作った極東青年会と協力し、戦争回避に向け奔走、やがてアメリカ人記者レイと知り合う。だが、遂にドイツがポーランドに侵攻、戦争が勃発すると、慎は〝一人の人間として〟生きる決意を固めてゆくが……
もともとポーランドには多数のユダヤ系・ドイツ系ポーランド人が住んでいました。
しかしドイツの侵攻で同じ国の国民どうしが引きさかれます。
ドイツを憎悪しソ連を嫌悪するポーランド人、しかしそのポーランド人同士も分断されていきます。
そして同じく日本人でありながら父親がロシア人であるためハーフの風貌を持つ主人公慎は子供の頃から自分がどの国の人間なのか葛藤していました。
戦火に巻き込まれた慎は迫るドイツ軍の中で最後に友人たちと約束するのです、「また桜の国で」と。
この本も非常に読み易く書かれています。それは須賀しのぶがもともと少女文学いわゆるライトノベルから出発したからかもしれません。
決して重く感じない文章なのですが静かに心に響きます。
この本で第四回高校生直木賞を受賞しました。やはり若者受けするのでしょう。
他にも甲子園野球を題材にした高校生を描く「夏の祈りは」やナチス時代を描く「神の棘I、II」、いずれも新潮文庫などがありますが高校野球が嫌いな私は読む気をなくしています。
まとめ
・何を血迷ったかという感じで2冊も同じ作者の本を買ってしまったのですがこういうことがたまにあるのです。長らく映画館に足を運んでいないため映画代ということで。
・おまけにさらにもう1冊購入してしまった本があり現在読み始めていますが面白かったらまた紹介します。これもコロナ禍のせいと言っておきましょう。
・刻々と経済破綻への道を歩んでいるのに何を考えているのやらと自戒しているのですが毎回自戒だらけで慢性化して麻痺状態です。
・上記の本は本当に面白かったです。興味のある方、特に年金を預金できるほど経済に余力のある方は書店を救済するためにも購入しましょう。
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