以前からよく聞く言葉に「活性酸素」があります。なんらかのスポーツ、特にマラソン、トライアスロンなどの長距離走ったり持久力を要するアスリートにとってはよく聞かされる言葉でしょう。もっとも良い意味で使われる言葉ではなくほとんど悪者扱いですが。
よく激しい運動をすると活性酸素が発生するのでスポーツは体に悪いとかいう人もいます。私も筋トレや登山をするのでこのへんが気になるところです。
実際のところ活性酸素はどんな酸素?、物質なのでしょうか。
そして筋トレとマラソンのような有酸素運動ではどちらがより多く活性酸素を産生するのでしょうか。
目次
活性酸素とは
そもそも活性酸素とは大気中の酸素分子が他の分子と結合したり電子だけを奪ったりしてより反応性の高い化合物に変化したものの総称を言います。
一般に活性酸素には分子の構成上下記の4つがあります。
・スーパーオキシドラジカル
・過酸化水素
・ヒドロキシラジカル(もっとも危険な活性酸素)
・一重項酸素
活性酸素はどこで作られるのか
活性酸素は主にミトコンドリアや様々な酸素反応で産生されますが、酸素が関わらないフェントン反応でも産生されます。
一般に呼吸で取り込んだ酸素の90%以上はミトコンドリアで使用されます。
ミトコンドリアはどの細胞にもある小器官で、その主な機能は酸素を使って生命維持のためのエネルギー(ATP)を作ることです。
そしてこの過程で酸素の0.1〜2%が活性酸素になると言われています。
活性酸素の働き
活性酸素の本来の働きは下記のように人体に大変重要な役目を果たしています。
・体に侵入した細菌やウィルスを殺す
・情報伝達や遺伝子発現の調節
過剰な活性酸素の人体への影響
正常に活性酸素が産生していれば何も問題ないのですが、これが過剰に発生すると下記のような問題が発生します。
・正常な細胞、内臓や血管等への損傷
・老化
・タンパク質、遺伝子の損傷
・疲労の蓄積(パフォーマンスの低下)
さらに過剰な活性酸素は病気の90%以上に関与しているという人もいます。
過剰な活性酸素の産生の原因
激しいスポーツ
激しい運動で呼吸回数が増える時に産生します。また、筋肉に血液が集中したりその血液がまた元に戻ったりする過程でも活性酸素が産生します。
加工食品
加工食品のほとんどに食品添加物が入っていますが、この添加物は肝臓で解毒される過程で活性酸素を産生します。
アルコール
食品添加物と同様に肝臓で解毒される過程で産生します。
喫煙や空気の悪い環境下に住む
タバコの煙自身に活性酸素の一つである過酸化水素が含まれています。さらに肺にタールが入ると免疫システムが起動し活性酸素で攻撃します。このとき肺の細胞を破壊してしまいます。
喫煙で息切れがする原因は活性酸素による肺組織が破壊されたことによって起こります。
強いストレス
強いストレスを受けると副腎皮質ホルモンが分泌されて、これを元に戻そうとこのホルモンを分解する酵素が分泌されます。そしてそれぞれの過程で活性酸素が産生されるのです。
紫外線
紫外線を浴びると活性酸素が産生します。登山、サイクリング、トライアスロン、海水浴など屋外によく出る人は紫外線を浴びやすい環境下にあります。
この紫外線によって肌を守ろうとして活性酸素が増加し、それが過剰な場合シミ、シワ、皮膚がんさらに白内障の原因にもなってしまいます。
活性酸素とスポーツの関係
先述の通り激しい運動により活性酸素が産生することがわかりました。ここでもう少し激しい運動について掘り下げてみましょう。
私は筋トレや山登りをするのですがこれが激しいスポーツ、運動に該当するかどうかは疑問の余地があるのですが、呼吸するだけで0.1〜2%の活性酸素が産生されるのですから、ハァハァ、ゼイゼイといった呼吸ではその数倍から10倍の活性酸素が産生されるのではないかと推測します。
有酸素運動(マラソン、ジョギング、自転車、水泳、エアロビクスなど)
先述しましたが活性酸素は生命維持エネルギー(ATP)を作る場所であるミトコンドリアで産生します。このミトコンドリアを最も活用するのが有酸素運動です。
マラソンのような心肺機能や持久力を要する運動ではいかにミトコンドリアを増加させるかがキーポイントにもなるのです。したがって、呼吸回数が増えれば増えるほど活性酸素が増加してしまうので「激しい」有酸素運動は身体への損傷を引き起こしかねないことになります。
しかし、どの程度の運動強度から活性酸素による人体への悪影響になるのは明確になっていません。
<重要>ミトコンドリアからの活性酸素の産生によりミトコンドリア自身が損傷を受けてしまいます。そして損傷したミトコンドリアはより多くの活性酸素を産生してしまいます。まさに悪循環なのです。
日々激しい有酸素運動をしている人はこの点に注意しましょう。
筋トレ
筋トレは無酸素運動ですが、筋線維の微細な損傷(炎症)を回復させることによって筋肉が肥大していきます。しかし、筋繊維の炎症を修復させるために免疫効力のある白血球が使用されます。
活性酸素は白血球でも産生します。筋繊維の炎症にはこの白血球から産生された活性酸素を使用しています。したがって炎症が多ければ白血球が少なくなり免疫力が落ちる傾向にあります。
筋トレをする人やアスリートは風邪をひきやすいと言われるのはこのためです。
また、低酸素環境から高酸素環境へ移行する過程でキサンチンオキシターゼという酵素を介して活性酸素が発生します。
つまり筋トレの無酸素的状態から回復する過程でも活性酸素が産生するというわけです。
それでは活性酸素の増加を防ぐ手立てはないのでしょうか。
活性酸素の増加を防ぐには
生物には恒常性(ホメオスタシス)という環境の変化に対する生体内部での生命を維持しようとする本能が働きます。これを「恒常性」と言います。
活性酸素に対してもこの恒常性が働きます。それが抗酸化酵素です。
体の内部から分泌されるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)やペルオキシダーゼなどがそれに該当します。
これらは活性酸素が過剰に発生すると分泌して無害化してくれるのです。
しかし、彼らの処理量を超えるとさらに抗酸化物質が働き抗酸化酵素を助けます。
その抗酸化物質とそれらを多く含む食品は下記の通りです。
・ビタミンC
食品:パプリカ、イチゴ、柿、ブロッコリー、ピーマンなど
・ビタミンE
食品:ナッツ類、アボカド、カボチャ、タラコなど
・ビタミンA
食品:ウナギ、レバー、卵など
・その他
マグネシウム(SODの補酵素となります)
アスタキサンチン
ベータカロテン
リコピン
カテキン
クルクミン
マグネシウムは体内に存在する酵素のうち300種類の補酵素として働く非常に重要なミネラルです。
しかしこれらの抗酸化物質は外部から取り入れなければなりません。日頃激しい運動をしていると自覚している人は意識的にこれらを摂取する必要があります。
またこれらを活性酸素に対抗するために過度に摂取することは、本来体に備わっている抗酸化機能(抗酸化酵素)の退化があり得ることも考慮しておきましょう。全てはバランスなのです。
まとめ
・過剰な活性酸素が身体へ悪影響を及ぼすことは間違いないようです。
・筋トレと有酸素運動ではより多くの酸素を必要とするマラソンのような有酸素運動のほうがより活性酸素を産生します。
・食品添加物には気をつけないといけません。私は毎晩サバの水煮缶を食していますがこれも塩分が含まれているので塩分なしがオススメ。また毎晩のように飲んでいる缶ハイボールや発泡酒も食品添加物がいろいろ入っています。
・抗酸化能力(抗酸化物質の分泌)は30歳を過ぎると急激に低下してきます。加齢にしたがって上記の抗酸化物質(なるべく野菜など自然界の食品から)を意識的に摂取しましょう。
・また「適度は運動」は抗酸化能力を高めると言われています。
・プロのアスリートでない限り、少なくとも私のような週3〜4日に2時間程度の運動であれば活性酸素はそれほど気にする必要は無い。
・スポーツで活性酸素が一番問題になるのはプロもしくは市民ランナーでしょう。月に200km以上走る人は老化対策を考えたほうが良い。
・紫外線は登山、自転車、ジョギングなどのスポーツが気になるところです。特に登山では高所ほど紫外線が強くなるのでUVケアは必須です。
・普段の呼吸で酸素の0.1〜2%が活性酸素になります。安静時には14〜20回/分の呼吸をします。さらに安静時の酸素処理量は200cc/1h/体重1kgです。
仮に呼吸による酸素の1%が活性酸素になるとすると、200cc x 1/100=2cc/1h/体重1kg。
体重が60kgの人は、1時間当たり120ccの活性酸素を産生しているわけです。これが1日(24時間)では2,880cc(2.88リットル)の活性酸素を安静にしているだけで産生していることになります。
・ミトコンドリアからの活性酸素の産生は加齢にしたがって増加します。
・活性酸素を産生するミトコンドリア自身が活性酸素によって損傷し、その損傷したミトコンドリアはより多くの活性酸素を産生します。
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