前回の記事では活性酸素のお話をしました。活性酸素は人のすべての細胞の中にあるミトコンドリアという所で多く産生します。
ミトコンドリアは人が活動(生きる)するために必要なエネルギー(ATP)を作っているとても重要な所です。
このミトコンドリアはエネルギーを作る所なので筋肉(運動)ととても深い関係があります。
目次
ミトコンドリアとは
・酸素を使ってエネルギー(ATP=アデノシン三リン酸)を作る工場
・どの細胞にもある小器官
・病気とはミトコンドリアが不足した状態である
・良質腫瘍のがん化はミトコンドリアの機能低下が原因である
・独自のDNAを持ち、ほとんどの子供は母親のミトコンドリアを受け継ぎ父親のミトコンドリアを受け継いだ例は数例のみ
・ミトコンドリアからの活性酸素の産生は老齢動物で増加する
・ミトコンドリアで産生された活性酸素はミトコンドリア自身を傷つけ、傷ついたミトコンドリアはより多くの活性酸素を産生するようになる
・褐色脂肪細胞内のミトコンドリアに存在するUCP(熱産生タンパク質)が脂肪酸を取り込みエネルギーへ変換する
ミトコンドリアと筋肉の関係
・筋肉は遅筋(持久力用)と速筋(瞬発力用)に大別されるがミトコンドリアは圧倒的に遅筋に多く含まれます。
・呼吸とは「食物を分解する過程でエネルギーを取り出すこと」を言います。その簡単な化学式は下記の通りです。
食物+O2(酸素)→CO2 + H2O +ATP
↓
ATP + H2O → ADP(アデノシン二リン酸)+ エネルギー
↓
ミオシン(*1)+エネルギー →アクチン(*2)が動く(筋肉の伸縮)
↓
(特に有酸素)運動を続ける→ATPが消費される→ADPも分解される→AMP(アデノシン一リン酸)+リン酸
↓
AMPが増加し筋内細胞はエネルギー不足の飢餓状態(ブドウ糖不足、低酸素状態)
↓
AMPK(AMPキナーゼ)*3が活性化→PGC1a(タンパク質)が活性化
↓
核内遺伝子に「ミトコンドリアと作れ」と指令
↓
ミトコンドリアの体積が増加
*1:収縮タンパク質の一種。それ自体は収縮しないが駆動タンパク質として機能し、ATPの化学エネルギーを運動エネルギーに変換する。
*2:ミオシンと同じく収縮タンパク質の一種。ミオシンと異なり収縮し、ミオシンを活性化する活性タンパク質で体内に最も多いタンパク質。
*3:このAPMキナーゼは筋肉細胞に存在する酵素で、筋肉肥大を促進するmTOR系(酵素)の働きを抑制してしまいます。
ミトコンドリアを増やす方法
生体エネルギーを生み出すミトコンドリアが不足すると運動エネルギー不足どころか日常生活にも悪影響を及ぼし病気の原因にもなります。
さらに加齢とともに減少することもわかっています。
それではこのミトコンドリアは増やすことはできるのでしょうか。
運動によってエネルギーの必要性を感じさせる
具体的には5分程度の軽度の筋トレで軽く汗をかいた状態でジョギングなどの有酸素運動をする。
また低酸素トレーニングは古くなったミトコンドリアの再生促進の可能性がある
体に寒さを感じさせる
下半身の冷水シャワー、水風呂、寒中水泳など
カロリー制限をする
週末のプチ断食など
食事から
イカ、タコ、貝などに含まれるタウリンはミトコンドリアは増やします。
ウナギ、豚肉などのビタミンB群はAPTの生成を促進します。
まとめ
・テレビ、パソコン、スマホなどのブルーライトはミトコンドリアに悪影響を与える
・自然光はミトコンドリアに良い影響を与える
・ミトコンドリアは加齢とともに減少し老化、病気の原因となる
・一般人はもとよりアスリートにとって健全なミトコンドリアの増加は必須である
・過度な運動はミトコンドリアを損傷させる原因になる
・運動によるミトコンドリアの増加は運動をやめると1か月経たないうちにまた元に戻る
・ミトコンドリアの増加は基礎代謝を上げダイエットにも有効である
・ミトコンドリアで産生される活性酸素でミトコンドリア自身が損傷する場合がある
・ミトコンドリアは瞬発力に強い速筋ではなく、持久力に強い遅筋に多い
・ミトコンドリアを増大させるために有酸素運動でAMPキナーゼを活性化させると、タンンパク質合成を促進するmTOR系(酵素)の働きを抑制してしまう
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