以前から気になっている「キレる」「怒りっぽい」高齢者を最近また見かけました。
映画館の切符売り場で座席を決めるとき、迷っていると後ろから「早くしてくれ!」と声がかかりました。振り向くと私のすぐ後ろに若い女性、その後ろに70代後半と思われる背の高い高齢男性が立っていました。
私はこの高齢者に向かって「どうぞ、どうぞ。棺桶に片脚突っ込んで先の短い老人は、お先に!」と手招きすると、一瞬引き攣った顔をしましたがソソクサと切符売り場に来て座席を指定しエレベーターへとダッシュしたのでした。
その間、私の後ろの若い女性に対して「お先に」とか一言もなくです。もうこの高齢者には自分のことしか考えられないのです。「早く座席を決めなければ」「早く会場に入らなければ」の早る気持ちしかないのです。
3人に1人が65歳以上となってきた日本では「キレる」「キレやすい」老人は日本社会の問題としてはもはや定番です。
どうして彼らはキレやすくなるのでしょうか。
加齢による脳機能の低下が原因
高齢化すると身体のさまざまな部位が老化、言い換えると機能の低下が出てきます。
脳もその一つで脳の中の前頭葉のなかの前頭前野と呼ばれる部位では行動や感情をコントロールする大脳の一部です。
この前頭前野はヒトが他の哺乳類に比べて大脳に占める割合が非常に大きく、ある意味ヒトがヒトであることを証明しています。
この部位が加齢により機能低下するのです。(または交通事故などの外的損傷による)
その結果感情やそれに伴う行動をコントロールすることができなくなって「キレたり」「怒りっぽくなったり」「やる気がなくなったり」する老人が出没するのです。
しかしその前頭前野の機能低下にはかなり個人差があることでも知られています。
つまりすぐキレる老人もいればキレない老人もまたいるということです。
この違いはどこから来るのでしょうか。
キレる高齢者が生まれる生活習慣
社会的孤立感
高齢者になると長年勤務していた組織から離れる場合が多くなります。
単身者ばかりでなく家庭を持った高齢者でも家庭内で孤立する場合が多々あるのです。
亭主関白、会社人間で家庭を顧みず家族内の会話がない、会社以外の友人が少ない、地域社会でのつながりがない等の人たちが退職後徐々に社会的孤立感を深めていきます。
そうすると社会の一員としての自覚が喪失し社会的刺激が少なくなり、当然ながら脳への刺激も少なくなって機能が低下するのです。
脳も刺激がないとその機能が低下していくのです。
定期的な運動不足
人が動くためには筋肉を動かさなければなりません。
筋肉を動かすためには脳がその命令を出さなければなりません。
脳は末梢神経のなかの運動神経で筋肉と繋がっています。
つまり筋肉を動かすということは脳を働かせるということでもあります。
したがって定期的に体を動かす、体に刺激を与え続ける行為が必要になってくるのです。
個人差もありますが高齢になると無理な運動ができなくなりますが適度な運動は必要なのです。
縄跳びや早歩きなどは簡単にできて継続できる運動です。
また筋トレなど少しハードな運動をすると睡眠中(寝入り始め)に脳下垂体から成長ホルモンが分泌され、それが肝臓に届くとIGF-1(インスリン様成長因子)が分泌されそれが筋肉に運ばれ筋肉肥大を促進させます。
この物質は脳由来神経栄養因子(BDNF)と言われ血液から脳へも達し大脳皮質大脳基底核を活性化させ記憶力や認知機能を高めてくれます。
筋トレなどの運動が脳を活性化させると言われる所以です。
聴力、視力の衰えからくるイライラ
高齢になると聴力、視力が衰えてきます。
聴力では聞こえる音域が狭くなり、大きな音には異常にうるさく感じられたり、音が割れて聞こえたりする症状が起こります。これをリクルートメント現象と言います。
高齢者が赤ちゃんの泣き声に異常に反応するのはこのリクルートメント現象の場合が多いのです。
また視力の衰えにより印刷物の文字が読めなくなったりテレビの映像がぼやけて見えるようになると気付かぬうちにイライラしてくるようになります。
これらの状態もキレる高齢者を製造してしまう要因になるのです。
前頭前野を活性化させるには
前頭前野を活性化させるには体を動かすことが必要です。
しかし何も筋トレやスポーツだけが運動ではありません。
手先を使う運動。例えば、ものつくりや楽器演奏、ゲーム、(手の込んだ)料理などは手先を使い脳を刺激します。
またあえて新しいこと、ややこしいことに挑戦するのも脳を活性化させてくれます。
いずれも継続することが大切です。
またキレる高齢者の周囲の人は本人の意思や役割を尊重することも大切になってきます。
終わりに
誰しもが高齢化します。
ヒトは歩く動物であり社会的動物です。それを放棄すると筋肉や関節ばかりでなく脳機能が低下していきます。
それでなくとも神経、特に運動神経、感覚神経などは10代で完成され、あとはどう発展、維持させるかは本人次第ということになっています。ここに個人差が生まれます。
神経だけではく筋肉も20歳前後がピークであとは徐々に減少し、60歳を過ぎるとそれが顕著になってきます。
神経、筋肉の機能低下は即脳の機能低下につながります。
その脳の機能低下によってすぐキレる高齢者が生み出されるのです。
しかもこういうすぐキレる高齢者は、前頭前野の機能低下の一つである「自分の問題を認識できない」という症状もあるので厄介なのです。
私は常にこういう人たちを見て反面教師にしているのですが、先述の通りこういった高齢者にキレそうになることがあるので他人事ではありません。
自戒を込めて。
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