アイキャッチ画像:GRANNOTE(写真:藤巻翔)
以前たまたまテレビでトランスジャパンアルプスレース2022(TJAR)を見る機会がありました。
確か日本海から太平洋をアルプスの山々を通る日本で一番過酷なトレランレース。
これに優勝したのが大阪の消防士の土井陵(どいたかし)さん。40歳。
今までこのレースの優勝者は5日以上の時間を要していたのにこの人はあっさりと4日17時間33分と5日の壁を破ってしまったのです。
ここまでなら単に「凄い人がいるんだな」で終わってしまうのですが私が本当に驚いたのは別のこと。
半月板切除でも山岳レースに挑む
それはこの人が大学生時代にバスケットボールをしていて膝の前十字靭帯を断裂し、半月板を切除していたからです。
膝関節内にある半月板は大腿骨と脛骨の間にあって歩行や走行時の衝撃を吸収する緩衝材です。
大腿骨と脛骨の先端は厚さ3mm程度(5~7mm とも言われている)の軟骨で覆われており、膝の屈伸で双方の骨の軟骨部分が一部直接接触します。
その表面は非常に滑らかになっており膝をスムーズに曲げることができるようになっているのです。
しかしそれを切除するとどうなるか。
半月板がなくなると膝を曲げるたびに直接軟骨同士が接触する面積が非常に大きく強くなるため軟骨の摩耗が激しくなります。
その結果軟骨がすり減り骨と骨が剥き出しになって骨と骨が直接接触するようになるのです。
さらに血管や神経が通っている骨膜を刺激し膝痛が出たり最悪その骨頭部が壊死してしまう場合があるのです。
私のような変形性膝関節症は基本的に半月板が変形してきて緩衝材の役目を果たさなくなったり滑膜に接触して膝痛を発症したりするのですが、半月板そのものがなくなるとよほど筋肉が発達している若いうちはまだしも加齢に従って上記のようにその悪影響は顕著になってくるのでしょう。
この辺りはご本人も整形外科医から聞いているはずなのですがそれでもこのような過酷なトレランレースに出続けているのはどういう神経をしているのかと驚いているのです。
この大会に出場するときには事前に膝にヒアルロン酸注射をして臨んだと言っていましたがそれは一時的に痛みを麻痺させるだけのことであり治療ではありません。
普段現役の消防士として仕事をされているようですが全く支障がないのであればよほど下半身の筋肉が発達しているとしか言いようがありません。
それでも筋肉が落ちてくる高齢者になると間違いなく膝関節症に悩まされるのではないでしょうか。
何が身を削るようなことをしてまで山岳レースに出場し続けるのか。
山を走る爽快感は理解できますがやっぱり何かに取り憑かれたとしか言いようがありません。
右膝靭帯断裂のボディビルダー
もう一人すごいと思う人がいます。直近のデジタル記事で見つけた全日本学生ボディビル選手権で準優勝した刈川啓志郎さんという人です。
この人はサッカーで右膝靭帯断裂をされてサッカーを断念しリハビリをしている最中に筋トレにハマったというアスリートの間ではよく聞く話ではあるのですがそのあとが凄い。
靭帯断裂の後遺症として右膝が伸びきらず、右膝をかばっていた左膝も同じように伸ばし切ることができなくなったそうです。筋肉の拘縮(こうしゅく)です。
それでも脚トレでは、毎週レッグプレス、ブルガリアンスクワット、レッグエクシテンション、シーテッドレッグカール、ハックスクワット、シシースクワット(この種目は膝に悪い!)、そして締めでバーベルスクワットを合計3時間以上しているそうです。
そして筋トレ最中と筋トレ後3日間は膝が痛いと言っています。
「オイオイ、そこまでやるか」と突っ込みたくなりますね。
筋トレ最中に膝が痛くなったら普通止めるでしょう。やっぱりこうまでしないと筋肉は肥大しないのでしょうね。
私がなかなか筋肉肥大しないのはそもそも筋トレのボリュームが少なすぎるのかも。
しかしこの人も下半身の筋肉があるうちは問題ないでしょうが筋肉が落ちてくると慢性的に膝痛に悩まされるのでしょうね。
それを知っていてやっているのでしょう。
まだ若いから自分は大丈夫と思っているのかもしれません。
終わりに
いろいろな人がいます。
私のようなビビリは理学療法士から「もう下山時には走らないでください」と言われたときはもう人生が終わったと思ったくらいショックでしたがその後独自の筋トレでリハビリを続け今では膝の痛みはかなり軽減されてきました。
特に登山では全く膝の痛みはありません。
それでも山で走りたくても走らないようにしています。
死ぬまで歩ける身体でいたいからです。
歩行困難になると行動範囲が極端に狭くなるだけでなく精神的にうつ状態になりやすくもはや「死に体」状態になるからです。
それでも靭帯切断しても半月板切除しても山岳を走ったり超ハードな筋トレをしている人がいるということに私は勇気付けられるのでした。
この記事へのコメントはありません。