ジムで筋トレをしていると、ときどき懸垂やディップスをする人の中には体を持ち上げる時には素早く持ち上げ、体を下す時はゆっくり下すトレーニーを見かけます。
このゆっくりした動作によって筋肉により大きな負荷をかけているのです。
それではどうしてゆっくり体を下すとより筋肉により負荷がかかるのでしょうか。
登山と関連付けて説明したします。
筋肉は収縮することで力を発揮しますが、その収縮にも種類があるのです。
目次
エキセントリック収縮とコンセントリック収縮
筋肉の収縮には主に下記の3つの収縮があります。これを上腕二頭筋を鍛える種目であるダンベルカールで例えてみましょう。
コンセントリック収縮
ダンベルを持った手を自分の体に引きつけようとすると、上腕二頭筋が縮もうとしダンベルの重さに打ち勝った場合、この筋肉は収縮し前腕が引き寄せられます。
この「筋肉が縮むときに筋肉が力を発揮している状態」をコンセントリック収縮と言います。
エキセントリック収縮
ダンベルを持った手を自分の体に引きつけようとすると、上腕二頭筋が縮もうとしますがダンベルの重さに負けた場合、この筋肉は伸ばされ前腕を引き寄せることができなくなります。
この「筋肉が伸びているときに筋肉が力を発揮している状態」をエキセントリック収縮と言います。
アイソメトリック収縮
ダンベルを持った手を自分の体に引きつけようとすると、上腕二頭筋が縮もうとしますがダンベルの重さと均衡を保ってしまい、この筋肉は伸びも縮みもせず前腕は動けません。
このような状態をアイソメトリック収縮と言います。
しかし、
「どの動作も筋肉が縮もうとしている」
「結果として、筋肉の長さが縮んだり伸びたりしている」
ということになります。
筋トレのエキセントリック収縮の例題
冒頭で説明した懸垂やディップスでゆっくり体を下す動作は鍛えられる筋肉にとってエキセントリック収縮になります。
スクワットでは膝を曲げた状態からウエイト(バーベル)を持ち上げる時はコンセントリック収縮で膝を伸ばした状態からゆっくり膝を曲げてウエイトを下す時はエキセントリック収縮となります。
したがってスクワットではウエイトを下ろす状態の時がより筋肉肥大に貢献するのです。
海外の治験結果ではエキセントリック収縮はコンセントリック収縮よりも1.5倍の力が出るという報告があります。
そのためにエキセントリック収縮を利用したバーベルスクワットではより重いバーベルを用い補助員をつけて立った状態からゆっくり屈伸するまでトレーニー一人で動作しますがバーベルを持ち上げる時は補助員のサポートが必要になる場合があります。
登山でのエキセントリック収縮とコンセントリック収縮
また登山では下りで主に大腿四頭筋がエキセントリック収縮をします。大腿四頭筋は立った状態が一番筋肉が収縮している状態なので膝を曲げると筋肉が伸びることになります。
下山では後ろ脚に体重を少し残しながら前脚の膝を曲げ一歩前に出します。この膝を曲げる動作でエキセントリック収縮になっているのです。
さらに下山時は一本脚で全体重+ザック重量を支える瞬間が毎回一歩ずつあるのでかなり脚に負荷がかかります。
そしてその数(歩数)を考えれば脚がかなり疲労するはずです。
これはエキセントリック収縮では主に速筋が使われるからです。
速筋は瞬発力に優れているのですが持久力に乏しいのです。
またエキセントリック収縮では筋線維が伸びダメージが大きくなるのです。
これに対して上りはコンセントリック収縮となるので主に遅筋が使われます。
遅筋は瞬発力には乏しいのですが持久力に優れています。
またコンセントリック収縮のような筋線維が縮むときはその筋線維のダメージは小さくなるのです。
このように登山ではエキセントリック収縮で筋線維を伸ばしたりする場合が多い大腿四頭筋が一番負荷がかかるのです。
一方、遅筋は速筋より酸素をより使うので上りは下りよりハァハァと酸素をたくさん取り込もうとして息苦しくなるのです。
登山で上りは息苦しく、下りは息苦しくないという理由の一つは使う筋肉の種類が違うからなのです。
登山の筋肉痛の原因は?
登山での筋肉痛は上りでもありますが主に下山時に起こるエキセントリック収縮による筋肉痛です。
この筋肉痛は「遅発性筋肉痛」で運動後(登山後)の翌日以降に起こる筋肉痛です。
その原因は筋肉が微細な損傷を起こし、炎症して発痛物質が発生しそれが脳に送られて痛みを感じるというものです。
詳細は、『筋肉のはなし:筋肉痛』に記載されています。
しかし最近は筋肉痛は筋肉そのものの炎症ではなく筋肉を包む筋膜の炎症ではないかとも言われています。
今現在でも筋肉痛の明快な原因はわかっていないところが多いのです。
このエキセントリック収縮で起きる筋肉痛は回復に時間がかかります。
また筋肉は柔らかいほど筋肉痛は起こりづらいとも言われています。
したがって、筋肉が硬く、下山がロングコースの場合は筋肉痛がひどくなる場合があります。
エキセントリック収縮運動はダイエットに有効?
エキセントリック収縮運動は運動中のエネルギー消費がコンセントリック収縮よりも少ないのですが、エキセントリック収縮運動後は長時間にわたって安静時の代謝が上昇することがわかっています。
したがってダイエットにも有効かもしれません。
また階段の上りと下りでは下りの方が格段に骨密度が高くなるという報告もあります。
したがって登山はしたいけど体力の自信のない中高年者は上りはケーブルカーで上り、下りは歩いて下りるという運動がいいかもしれません。
まとめ
・エキセントリック収縮は「筋肉が伸びているときに筋肉が力を発揮している状態」を言う
・コンセントリック収縮は「筋肉が縮んでいるときに筋肉が力を発揮している状態」を言う
・エキセントリック収縮はコンセントリック収縮よりも筋肉痛になる
・登山におけるエキセントリック収縮は下りであり、主に速筋が使われる
・登山におけるコンセントリック収縮は上りであり、主に遅筋が使われる
・上りは息苦しく下りが息苦しくないのは上りでは主に遅筋が使われるから
・階段の上り・下りでは下りの運動の方が格段に骨密度が高くなる
・下りで筋肉痛になるのは上りでの疲労蓄積に加え速筋が使われるから
・エキセントリック収縮は長時間安静時の代謝が上昇する
・筋肉は柔らかいほど筋肉痛になりづらい
・登山での筋肉痛は筋肉そのものよりも筋膜の炎症の可能性がある
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