健康

街で見かける歩行困難な高齢者とそうならないための予防法

毎日のように電車に乗り外出していると駅構内や街中でたくさんの高齢者を見かけます。電車では世界一の利用者がある新宿駅内を歩いていると特にそう感じますね。

都内に住んでいいる人、地方から来た人、様々ですが気になったのは脚に問題がある人が多いことです。

街で見かける高齢者の歩き方

・杖をついて歩く人

・背中を丸め小さな歩幅でトボトボ歩く人

・ショッピングカー(シルバーカー)を押しながら歩く人

・脚を引きずるように歩く人

・車椅子の人

・片脚が明らかに損傷している人

・両脚の膝の間に拳2つ以上隙間がありそうな膝関節が湾曲している人

・身内・知人に寄り添ってもらいながら歩く人

別段こういった高齢者の歩き方を観察していたわけではなく日常的にこういう高齢者を良く見かけるのです。

それもそのはず、すでに日本の28%が65歳以上の高齢者でまもなく3人に1人が高齢者。

まさに世界に名だたる老人大国なので確率的にも目につくのです。

脚に問題を持たせる高齢者の環境

歩行速度が速い人ほど生存率が高く、遅ければ遅いほど生存率が低い」と言われています。

脚だけではありませんが、こういう身体に問題のある高齢者は何らかの生活環境に問題があるのです。

十分な運動をして来なかった

普段外出しなかったり、自宅からすぐ車で移動して歩く習慣がない人は下半身の筋力の低下により「すり足歩行」になりやすいのです。

私の亡くなった祖母も実家で2度転倒して脚を骨折しています。若い頃から和裁の仕事(内職)をしていてずっと座りっぱなしだったことも影響しているのではと思っています。その後老人専門病院に入院して老衰で亡くなりました。

ずっと専業主婦だった人も家事だけでは運動不足です。さらに食事を作る合間にチョコチョコとつまみ食いをしているといつの間にか太ってしまいます。

日常生活の中の姿勢に問題がある

農家の方も一見外で仕事をして健康的と思われるかもしれませんが、田畑での仕事であれば前かがみになる作業が多くなり、「腰痛」や「膝関節湾曲症」などになりやすいのです。

座り仕事をしている人も下半身が他の人よりも衰えやすくなります。

こういった生活環境の違いにより身体の骨格に影響を与えてしまうのです。

事故

交通事故など何らかの事故で脚に損傷をきたした人も多いでしょう。スポーツをしてきた人でも思わぬアクシデントで下半身が不自由になった方も多いのです。

偏った栄養の摂取

脚に問題のある人に多いのが運動不足と偏った食事をすることによる「栄養不足」です。

加齢になるに従って食事量が減り特にタンパク質、脂質の摂取量が減ってきます。気がつくと糖質ばかり摂取していることになっています。

タンパク質は筋肉(心筋など内臓の筋肉を含む)、毛髪、爪、皮膚、骨などの原料です。呼吸をするのにも20種類ほどある呼吸筋という筋肉を使っているのです。

脂質は普段悪者になっていますが、新しい細胞やホルモンの原料になったり運動エネルギー源になったりする大事な栄養素なのです。

しかし今現在の実質的な悪者は糖質です。もちろん極端な糖質制限には問題がありますが、日本人は今まで白米、パン、麺類などの糖質を過剰に摂取してきました。

さらに清涼飲料水、ケーキや菓子パンを含めたお菓子類、日本酒、ビールなどのお酒には多くの糖質が含まれています。

これに運動不足が重なるとこれらの糖質は脂肪細胞へまっしぐらで体脂肪となって蓄積されます。つまり主な太る原因は糖質なのです。

これら偏った栄養素の摂り方をしていると若い頃は目立った問題はなくとも年を取ってくるとはっきりその悪影響が現れてきます。

加齢による筋肉の減少(サルコペニア)

加齢によって筋肉量がだんだん減少してきます。

これを「サルコペニア」と言います。特に高齢になると下半身の筋肉量の減少が顕著になります。また単に筋肉量が落ちただけでなく低筋力の場合にもサルコペイアと診断されます。

日常的に歩行困難になる年齢に男女差

日本の男性と女性の平均寿命はそれぞれ81歳と87歳です。だんだん伸びてきますね。これがいいのか悪いのかは別として。私など80歳まで生きたくもありません。

しかし、女性は男性に比べて平均寿命が長いのにもかかわらず歩行困難になる年齢は75歳以降と男性の80歳以降より5歳程度早くから起こります。

おそらくこれは骨密度が関係しています。男性より体重が軽く出産もある女性は骨密度が低くなりがちです。

骨密度が低いと骨折しやすくなるのです。骨折しやすいところは脚では大腿部が多く、特に股関節近くの大腿部の骨折は「大腿骨近位骨折」と呼ばれ骨密度の低下による「転倒」が原因となります。

65歳以上の「大腿骨近位骨折」では5年の生存率は胃がん生存率より低いというデータもあります。

「大腿部の骨折」はまさに「癌(がん)」どころではないのです。

この点男性の高齢者は平均寿命が81歳なのに歩行困難になるのが80歳とは本人の努力というより骨格の違いというところでしょうか。

しかし、80歳にも満たないのに歩行困難な男性高齢者も多数見かけます。

歩行困難にならないために

それではどうすれば歩行困難にならないのでしょうか。

筋力アップ

まずは下半身の筋トレが必要です。

私が通っているジムには多くの高齢者が来ています。別段ウエイトを使った筋トレをしているわけではなく、女性に混じってエアロビクスをやったりバイク、トレッドミルなどをしています。プールでの水中ウォーキングもいいでしょう。

自重で筋トレが出来ますのでそこから始めましょう。自宅で十分です。

<ポイント>

特に意識すべきは股関節の可動域です。股関節の可動域を広く取ることで筋力アップにつながります。無理をしてウエイトをかけるのではなくまずは自重で股関節の可動域を広げましょう。

<股関節の可動域を広げるための自重トレーニング>

・フルスクワット

自重フルスクワッット(出展:グロウアップマガジン)

両足を肩幅程度に広げトイレの便器に腰掛けるようにお尻を後ろに突き出し股関節から曲げていきます。できるところまで腰を下ろしまたゆっくり立ち上がります。これを20回x3セット。上半身は少し前傾し背中を真っ直ぐ伸ばします。両手はバランスをとるために胸の前で組むか、「前へならえ」をしましょう。楽にできるようになれば両手にペットボトルを持って負荷をつけましょう。リュックを背負って負荷をつけてもいいですね。

・ステーショナリーランジ

ステーショナリーランジ(出展:4MEEE)

大股に一歩片脚を前に出して両手を腰に当てます。上半身は床に垂直に真っ直ぐ。その姿勢のまま腰を下ろしていきます。この時も股関節から曲げるよう意識しましょう。左右脚各10回x3セット。これも楽にできるようになると上記のように負荷をかけましょう。

・つま先立ち

つま先立ち(出展:朝日新聞)

足幅を肩幅程度にして壁に両手をつき真っ直ぐ立ちます(上記イラストはテーブルに手を置いています)。その姿勢のままつま先立ちをします。この時足の親指と人差指の間に重心を持っていきます。この部分は歩行時につま先を蹴る時に力を入れる場所です。20回x3セット。楽にできるようになると負荷をかけましょう。

ストレッチ

風呂上がりにストレッチをします。この時も股関節の可動域を広げましょう。

以前一時流行った両脚を横に180度開脚するストレッチは全く必要はありません。逆にこのストレッチは股関節を痛める危険があるだけです。

横にストレッチをするのであれば私が毎晩風呂上がりにやって股関節の可動域を広げたやり方をやりましょう。

四股(シコ)

足幅を肩幅の2倍程度に広げ両手を両膝の上に置きます。上半身はできるだけ真っ直ぐ立てます。その姿勢で腰を真下に下ろしていきます。決して膝ではなく股間節を意識しましょう。無理せずできるところまで下ろしたらまた元の姿勢に戻します。これをゆっくり10回程度しましょう。毎晩やるとだんだん股関節に柔軟性が出て落とせなかった腰がまるで相撲取りのシコのように落ちるようになります。

縦の股関節ストレッチ

縦のストレッチは大股で一歩前に片脚を腰を落としていきます。後脚はつま先立ちになっています。両手は前脚の膝の上に置きます。上半身は少し前傾し真っ直ぐな姿勢をキープします。これも無理せず腰が落とせるところまで落としていきます。20秒程度キープしたら脚を交換しましょう。

手指作業

何か趣味で手を良く使う作業をしましょう。手指を使う作業を良くしている人は歩行速度の減少が平均より少ないという報告があります。手芸、ピアノなどの楽器演奏など。

栄養のバランスをとる

先述した通り高齢になるに従いタンパク質、脂質の摂取量が減少してきます。これを防ぐには積極的にこれらの栄養素を摂取することが大切です。

特に青魚に豊富なタンパク質だけでなくEPA、DHAというフィッシュオイルが含まれています。これらは体脂肪になりにくい中鎖脂肪酸であり疲労回復にもいいのです。缶詰でも摂取できますが加工品なので塩分には気をつけましょう。

その他ビタミン、ミネラルもこれらの栄養素が身体に吸収されることを促進します。特にビタミンCは抗酸化作用がありますし、ビタミンB2、B6などは皮膚合成や疲労回復にも効果があります。

マグネシウム、カリウムなどのミネラルも体内で色々な働きをするので必要です。

これらの栄養素をバランス良く取っていくことが大切なのです。くれぐれも糖質ばかりに偏らないような食生活をしましょう。

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