健康

健康維持・老化防止には摂取タンパク質比率を決めることが重要

最近面白い本を読みました。「食欲人」(サンマーク出版)でシドニー大学の栄養生態学の先生が書いた本です。バッタの生態から栄養分析を行いバッタを含む多くの生物には一定のタンパク質摂取比率があることを見つけ出した科学者です。

サンマーク出版はこれ以外にも「運動脳」など科学的な内容を平明に書かれた本を出版するなど草思社とともにユニークな出版社です。

下記の半数以上は抜粋ですが私が簡略化、追加した文章もありますのであらかじめご了承願います。

バッタのタンパク質欲比率は15%で達成する

これをバッタの「タンパク質欲」(原文ではなんと言っているかは不明ですが)と言っていますが人を含む多くの生物はこのタンパク質欲があり、その一定のタンパク質比率を摂取するまで食欲があるらしい。

バッタでは必要タンパク質量は全体の食料の15%であり、その比率に達するまで餌を食べようとします。

「タンパク質欲が満たされなければ、動物はそのまま食べ続ける。いったん十分なタンパク質が得られれば、摂食を促していた食欲は止まる。」

餌にはタンパク質が多く含んでいるものもあれば少量しか含んでいないものもあります。そのためタンパク質量が少ない餌はその比率が15%に達成するまで餌を食べ続けるというわけです。

食物の3大栄養素といえば炭水化物、脂質にタンパク質ですからタンパク質の少ない餌を食べ続けるということは大量の炭水化物や脂質(脂肪)を摂取することになるわけです。

これを人に当てはめると高タンパク質の食物を摂取していると炭水化物や脂肪の食欲は減少し、低タンパク質の食物を摂取していると高炭水化物や高脂肪の食物をたくさん摂取することになります。

私たちのタンパク質欲が、脂肪と炭水化物の摂取を制御する能力よりも強いから、太りすぎてしまうのだ。

そうすることで人は肥満などの生活習慣病になるわけです。

このタンパク質の比率は生物によって変わるのですが一般人も大体15%前後らしいです。

もっとも筋トレをするものやアスリートは高タンパク質が必要なのでこの比率はもっと高くなります。おそらく20〜30%になるでしょう。これはPFCバランスからいうと

P(タンパク質):F(脂質):C(炭水化物)=20〜30%:20%:50〜60%

が一般的に定期的に運動する人には適応します。

中年期は低タンパク質、老年期には高タンパク質が健康にいい

しかし40歳から65歳くらいまでの中年期にはタンパク質が少なめ(10〜15%)で、炭水化物(ただし健康的な炭水化物)が多めの健康的な脂肪をほどほどに含む食事を摂れば、健康を促し、老化のプロセスを遅らせることができる。

その後65歳以降の老年になれば、もう一度タンパク質をー中年時代よりもー多めに食事に含める必要がある。それは、体がタンパク質を効率的に維持できなくなるからである。歳と共に「水漏れ」がひどくなるのだ。

この場合の「水漏れ」とは水栓から水漏れしているバスタブにお湯をためるようなもので漏れる水(タンパク質)が多ければ多いほどバスタブを目標水位まで満たすために、(タンパク質の)摂取量を増やさなければならなくなる、ということです。

この年代(老年)になると、除脂肪組織のタンパク質が分解され、肝臓でグルコースに変換されやすくなる。高齢者の筋肉が減少するのは、このせいでもある。タンパク質比率を18%から20%に高めれば、必要な増分を補いやすくなるが、そのぶんカロリーの摂りすぎには注意しなくてはならない。

注)上記によってサルコペニア(=運動不足やタンパク質量の不足によって筋肉量が減少し身体機能が低下している状態)が引き起こされます。

老化は食事で調整できる

寿命を延ばし老化を遅らせる役目をする「テロメア」は染色体の末端にあるキャップ状の構造で細胞複製に欠かせない重要な要素が細胞分列時にほつれてしまうのを防いでいます。

加齢とともに傷ついて古くなった細胞の入れ替えが何度も繰り返されるうちにテロメアはどんどん短くなり、ついには染色体の末端部が露出し細胞分裂の際に複製エラーをおこすようになる。

やがてエラーが蓄積して、様々な組織や機関の老化を引き起こすのだ。

これからわかるのはテロメアの長さで寿命が見えてくるということです。

マウスの実験では

・低タンパク質/高炭水化物食を摂取したほうがテロメアが長く寿命も長かった

・高タンパク質/低炭水化物食を摂取したほうがテロメアが短く寿命も短かった

結論:タンパク質が多ければ多いほどいいというわけではまったくない。タンパク質を摂り過ぎると老化を早め寿命を縮める生物学的プロセスが作動するからである。

筋トレするものが最も嫌うタンパク質の喪失経路

タンパク質の必要量の決定要因としては

1)筋肉の成長や組織の維持、そのほかの体機能に必要なアミノ酸の需要。

2)体がタンパク質を分解し喪失する速度。

そしてそのタンパク質の喪失の主要経路は次の2つ。

1)体が筋肉組織を分解してアミノ酸を血流に放出するとき。

2)肝臓が筋肉分解によって放出されたアミノ酸をー腸内で消化された食物から血流に吸収されるアミノ酸とともにー利用して新しい体タンパク質をつくり出すのではなくエネルギー源であるグルコース(ブドウ糖)をつくるとき。

注)上記①、②は筋トレ業界的にいうと糖質(血中のブドウ糖や筋グリコーゲン)や血中遊離脂肪酸が枯渇してくるとエネルギー源として筋肉中のタンパク質を分解してアミノ酸から糖質(ブドウ糖)を作ること。これを糖新生といいますが、筋トレをするものが最も嫌う現象です。

終わりに

この「食欲人」は新刊ですが目をつけていたのでいち早くブックオフで見つけ購入しました。

上記以外にも刺激的な文章が載っていますが私は筋トレをしていて栄養素関係は興味があるので知っていることもたくさん載っていました。

その中でも「トランス脂肪酸が一番危険な物質」はわかる、わかるとうなずき、

食品メーカーはタンパク質を減らしている」はなるほどね、と新たな発見。(→先述した通りタンパク質欲には一定の比率がありそれを満足するために食欲があるのですがあらかじめ低タンパク質の食べ物を作ればその比率になるまでたくさん(食品を)摂取してくれる、つまりたくさん食品を購入してくれる、というわけです。そして原価は低タンパク質ほど安価。)

人体に有害な添加物の内容表示を非表示にできたりするのは食品メーカーのロビー活動のおかげとか面白い話が満載です。どこの国も同じですね。

新刊ですがブックオフなど古本屋でもチラホラ出ています。

いやぁ、参考になりました。

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