アメリカの白人警察官が黒人を逮捕時に抑え込んで殺してしまった事件から黒人を中心としたデモや暴動が全米に広まり白人の黒人(有色人種も同様でしょう)に対する人種差別が改めて浮き彫りになりました。
それ以前に私のブログ記事「国境なき医師団が特別給付金目当てで寄付集めか?」の中で欧米のボランティア団体にはアジアやアフリカの人たちを上目線で見ていると書きましたが、やはりこの国境なき医師団でも長い間に渡って植民地主義で人種差別があることが今回明らかになりました。
国境なき医師団の内部告発
下記はその内部告発をテレグラフ(イギリスの朝刊紙デーリー・テレグラフの電子版)の記者の報告です。
【記者:Henry Samuel】 緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」では体系的な人種差別がはびこっており、人道支援業務が植民地主義を増長させている──このような内容の文書に職員と元職員ら1000人が署名した。
同文書には、MSFが「特権がある少数派の白人」による「何十年にも及ぶ権力と家父長主義」に目をつぶり、方策や採用活動、職場環境、それに「人間性を失わせる」プログラムを通して人種差別を永続的なものにしたと記されている。
文書では上層部や職員に対し、抜本的な改革を早急に行うよう求め、また組織内の人種差別主義に対する第三者による調査も呼びかけられた。
MSF英国のジャビド・アブドルモネイム理事長、MSF南アフリカのアグネス・ムソンダ会長、MSFドイツのフロリアン・べストファール事務局長も同文書に署名している。
MSFは途上国や紛争地帯で暮らす人たちに緊急医療を提供する世界最大の人道支援組織の一つで、1999年にはノーベル平和賞を受賞した。
この文書は、人種差別主義および反人種差別主義運動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」に対する組織内部での意見の相違を受けて作成された。
発端はMSFイタリアによる提案だった。MSFイタリアは、「人種差別」という言葉を使うべきでなく、「MSFを始めとした全員」が「すべての命は大切」であると声を上げるべきだと提案し、これに一部から激しい反発が起きた。
MSFイタリアは後日、「世界中の職員を傷つけた」として謝罪している。
英紙ガーディアンが報じたところによると、ある職員は、MSFでは白人の救世主精神が「息が詰まりそう」なほどあふれていると文書に記していたという。
また別の職員からは「国内スタッフをMSFインターナショナル・スタッフの仕事に就けるよう支援したことがあるが、これまで経験した中で最も退屈かつ不公平、それに衝撃的なほどに腹が立つ採用過程だった」とするものもあったとされる。
MSFインターナショナルのクリストス・クリストゥ会長は同文書について、すでにMSF内で進めていた一連の変革を加速させる「促進剤」になると歓迎し「痛ましい出来事を経て生じた、怒りや議論を促進させるよい機会だと考えている」と語った。
「よりニーズがある場所に政策決定権を近づけ、介入する際の戦略立案に患者やコミュニティーも関わってもらうことが我々の最優先事項だ。欧州の政策決定力を縮小させ、他の国々に再分配しなければならない」 クリストゥ会長によると、6月29日に送られた文書で求められた改革に向けた要求内容は、文書が出される一週間前の会議で承認されていたという。
白人の救世主精神
上記の中で国境なき医師団(MSF)のスタッフが「MSFでは白人の救世主精神が息が詰まりそうなくらいあふれている」と言っていますが容易に想像できます。
救世主精神とは個人が救済者だと思う信念を抱く心を表現しています。
アフリカやアジアをはじめとする世界各地の貧困民を援助しているのですがその中には白人の救世主的な気持ちがあるのは事実でしょう。
おそらくその根底にはキリスト教の信仰もあるのです。かつて世界へキリスト教を広めようと各地へ散らばった宣教師たち。
彼らの信仰に対する信念たるや凄まじいものがあったのではないでしょうか。
自分たち(ヨーロッパのキリスト教徒)が世界の蛮族にキリスト教を広めようとする精神が別の形でどこかにまだ残っているように感じます。
ヨーロッパの宗教戦争
ヨーロッパの歴史は戦争の連続であり「平和とは戦争と戦争の間」と定義されるくらいです。
キリスト教同士の宗教戦争も凄まじくざっと挙げても下記の戦争が有名です。
・ユグノー戦争(1562〜1598年)
・オランダ独立戦争(80年戦争)(1568年)
・30年戦争(1618〜1648年)
さらに古くは中世の十字軍遠征(キリスト教vsイスラム教)もありました。
それに比べれば日本の織田信長の比叡山焼き討ち(犠牲者3,000〜4,000、1571年)や法華経(日蓮宗)と比叡山(浄土真宗)の天明の大火(犠牲者3,000〜10,000、1788年)なんて実に可愛いものです。
当時のヨーロッパ人の信仰に対する信念には凄まじいものがあったことはキリスト教が一神教の故なのでしょう。
「信じるものは救われる」ではなく「信じるものは狂人になる」を地で行っているというしかありません。
家父長主義とは
上記には家父長主義とありましたがそれは男性中心主義ということでしょう。女性の医師、看護師などの組織内の医療従事者から見ると国境なき医師団は全て男性が主導権を持って何でも決めてしまうことに対して「それはセクハラ」と考えているのではないでしょうか。
この辺は日本とそっくりですね。いや日本社会は国境なき医師団よりひどい家父長主義でしょう。
今も残る植民地主義
内部告発の冒頭部分で「人道支援業務が植民地主義を増長させている」と書かれています。
植民地主義とは国外で植民地を作って支配し、それを正当化していく考え方を言います。
人道支援で自分たちが貧困者、難民の生命を管理、維持しまるで彼らを支配下に置いていると(無自覚に)錯覚していると指摘しているわけです。
私が以前ブログで書いた「上目線」とはこのような感情もしくは思考を持った欧米人のことを指しています。
特に欧米の国々は未だに植民地化したアジアやアフリカの国々に対して正式な謝罪や補償をほとんどしていません。
特に補償は皆無です。
ドイツが第二次次世界後で当時の大統領がフランスに泣いて謝罪したことは有名で、それを日本と韓国に引き合いに出して言う人がいますがドイツはフランスだから謝罪したのであって彼らの植民地に対しては補償も謝罪もしていないです。
まとめ
Black Lives Matter」(黒人の命も大切である)というスローガンは、今に始まったことではなく2013年から2014年にかけてアメリカで使われ始めたのです。
国境なき医師団はよく映画館のコマーシャルなどで見かけ最近では駅前でも寄付のキャンペーンをしていました。
おそらくMSF Japanの人ははほとんど欧米人のような上目線は持ち合わせてはいないでしょう(そう祈ります)。なぜなら有色人種である日本人は白人から人種差別される対象なのですから。
ただし、まれにあまりそれを感じない鈍感な日本人もいるのです。あるいは自分は有色人種である全く思っていない人もいます。
それはそれで全く問題無いのですがそれでも白人はそういう人を有色人種と見ていることを自覚する時が来るでしょう。
欧米の白人と最も接触の多いのはかつて白人の奴隷商人によって売り買いされたアフリカ系黒人です。
それは1492年コロンブスによって新大陸(アメリカ)が発見されて以降のことです。
このアフリカ系黒人が欧米で最も人種差別を受けているのですがヒスパニック系やアジア系も人種差別を受けています。
しかし翻って日本人も白人に差別されながら白人と同じように黒人を人種差別しています。その理由は戦後のアメリカ文化の流入です。
アメリカの映画やTVドラマで描かれる黒人は召使か犯罪者です。まともなところではミュージシャンかプロスポーツ選手ですがせいぜい。
そういった文化をたっぷり吸収して育った日本人は知らず知らずのうちに黒人を危険で教育水準が低い人種と洗脳されてきたのです。
その日本でさえ第二次世界大戦では日本人を「文明化された人種」として他のアジアの国々を差別したのでした。
人種差別問題はなかなか解決しないのです。無くならないと言っていいでしょう。
かくいう私は間違いなく日本人で人種差別されたりしたりする極ありふれた凡人なのです。
人を差別したり差別されたり。人だけでなく他の動物の世界にもあるのでしょうね、きっと。
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