登山は下半身の筋力・心肺機能アップに有効な有酸素運動で、こんな時期でも登山に出かける高齢者が多いと実感していますが多くの高齢者が登山をするわけではありません。
高齢になればなるほど運動が面倒になり自宅にこもりがちでせいぜい散歩がてら近所への買い物が「いい運動」というのが実態です。
しかし散歩などは病気・ケガ後のリハビリと思っている私は運動のうちに入らないのです。
また確実に言えることは散歩だけでは筋力維持はできない、ということです。
目次
筋肉を使わないと関節の動きも悪くなる
60歳を過ぎてから筋肉が落ちる速度が速くなります。特に下半身の筋力の低下は上半身より速く本人が気がつかないうちにみるみる太ももやふくらはぎが細くなってくるのです。
使わないものは退化する。これは自然の摂理です。
高齢者の危険な兆候
・以前より歩く速度が落ちた
・坂道、階段を上がるのが疲れるようになった
・つまずきやすくなった
・すぐ手すりにつかまるようになった
・長時間テレビを見るようになった
・立ちっぱなしはすぐ疲れるようになった
このような高齢者は要注意です。
その結果長歩行が面倒になって行動範囲も非常に狭くなり日常生活にも不便さを感じるようになるのです。
また自宅にこもるようになる外部との接触が少なくなり対人関係が極端に少なくなってきます。
運動不足は筋力の低下ばかりでなく膝、股関節などの関節の動きを悪くしてしまいます。関節は筋肉運動によって動くのですから当然ですね。
加速する高齢者のサルコペニア
加齢による筋肉量の低下を「サルコペニア」と言いますがこれが高齢になると加速し日常生活どころか様々な生活習慣病を引き起こします。
さらに下半身の運動は脳の活性化と密接な関係がある事がわかっています。つまり下半身を鍛える事で脳が活性化するのです。
そうです、下半身の筋トレは認知症防止にも一役買っています。
それではどうすれば下半身の筋肉が鍛えられるのでしょうか。
自宅でランジをしよう
外出自粛のこんな時期ですから自宅でできる筋トレを考えてみましょう。
多くの高齢者が医師などの医療従事者に勧められている下半身の筋トレにスクワットがあります。
しかしここではスクワットではなくランジを紹介します。
ランジ(lunge)とはフェンシングで「突きを入れる」「突き」を意味します。
フェンシングの突きを入れるようなフォーム、つまり片脚を前(もしくは後)に出して運動する筋トレです。
ランジは大別して
・スタティックランジ(ステーショナリーランジ)
・フロントランジ
・バックランジ
・サイドランジ
があります。
これらをダンベルやバーベルを使って負荷をかけて行うのが一般的な筋トレですが、筋トレをしていない高齢者や女性にはまず自重(自分の体重のみの負荷)でやってみましょう。
ランジのメリット
スクワットと異なってランジは脚を前後に開いて行う筋トレです。
この脚を前後に開くというのはより「歩くフィーム」に近いのです。したがってスクワットよりもより実践・実用的な運動と言えるのです。
さらにスクワットではバーベル、ダンベルなど負荷をかけると腰を痛めることがありますがランジ系は腰に不安ある人でも安心して行うことができます。
最初はオーソドックスなスタティックランジ(ステーショナリーランジ)がいいでしょう。
スタティッククランジで鍛えられる筋肉
鍛えられる脚は基本的に前脚側ですがサブで後脚の太もも前面(大腿四頭筋)にも効きます。
脚を上げる運動でこれらの筋肉は活躍します
・大腿四頭筋(太もも前部)
・ハムストリング(太もも後部)
・臀筋(お尻の筋肉。大臀筋、中臀筋、小臀筋がある。)
・腸腰筋(インナーマッスル)
スタティックランジのやり方
(1)両足を肩幅程度に開いて起立する
(2)左脚を大きく一歩踏み出す
(3)上半身を床に対して垂直にしたまま腰を落としていく
(4)左脚は太もも前面が床と平行になるまで曲げる
(5)この時右膝が床スレスレになるまで下ろす
(6)4、5の状態になったらまた両脚を伸ばして元の姿勢(2)に戻る
(7)これを15回繰り返して反対の脚(右脚)を前に出して同じことをする
(8)片脚各15回x4〜5セットを行う
ポイント
・目線は前方
・両腕は胸の前で両手を組み合わせる、両手を頭の後ろで組む、腰に当てるなどして体のバランスが取りやすい方を選ぶ
・呼吸はスクワットと同じく腰を落とす時に吸い上げる時に吐く
・常時上半身は真っ直ぐにして背筋を伸ばす
・上半身を少し前傾すると前脚にかかる負荷が高くなるが腰にも負荷がかかりやすくなるので腰に不安のある人は上半身は床に対して垂直をキープしたほうが良い
・前脚は大股で一歩踏み出したほうがハムストリング(太ももの裏側の筋肉群)や臀部に効果がある
・片脚15回できなければできる回数まで行う
・片脚15回が楽にできるようになれば両手にペットボトルを持って負荷をかける(リュックがあればそれに重い本やペットボトルを入れて背負っても良い)
・屈伸するときバランスが崩れるようであれば片手をテーブルなどに付いて行っても良い
・前脚の膝はつま先より前に出さない
・前脚の膝を内側に入れない
・「腰を落とす→(その結果)膝が曲がる」という意識を持つ
・最初膝が曲がらなければ曲がるところまでで良い
下半身の筋トレは脳トレにもなる
筋トレすると脳が活性化するということを聞いたことがあるでしょうか。
そうであればボディビルダーはみなさん頭がいいのでしょうか。答えは「ノー」です。筋肉は大きければ大きいほどいいというわけではありません。
しかし国内外の研究機関の報告では間違いなく筋トレをすると脳が活性化すると実証されています。
マイオカインの分泌で脳を活性化
筋トレをすると筋肉自身から生理活性化物質(ホルモン)が分泌されます。20種類以上あると言われるそれらの物質を総称して「マイオカイン」と言います。
その中には
・脳に作用し神経細胞を増やしたり減少させたりする働きがある
・脂肪燃焼を促進させる
・大腸ガンを防ぐ
などの作用があると言われます。
さらに筋トレをすると筋肉以外の各所から様々なホルモンが分泌されます。
ノルアドレナリン(ノルエビネフリン)
交感神経が優位になる昼間に広く分泌されます。
副腎からこの副腎髄質ホルモンが分泌され「記憶の定着の助長」「思考の意欲増進」などの働きがあります。
セロトニン
脳内伝達物質であるこの物質は別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。
主に消化管粘膜から分泌され「生体リズム・睡眠などを調節」します。
ストレスがあると分泌されそれを抑制し「抗うつ作用」があります。
これ以外も様々な物質が筋トレで多く分泌されます。
また上半身よりも下半身の筋トレのほうがこれらの物質が多く分泌されることがわかっています。
サルコペニア防止の関連ブログ
私の過去のブログでは下半身の筋トレの必要性とその筋トレのやり方を書いています。本記事と合わせて参考にしてみてください。
・シニアやアスリートがやるべき下半身筋トレ!ブルガリアンスクワット
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