アイキャッチ画像:松岡正剛の千夜千冊「Japanは悪魔」
コロナウイルスが中東、ヨーロッパ、アメリカなど海外でも感染者日増しに増加して日本人を含むアジア系の人たちへの人種差別が顕著化してきたというニュースを目にするようになりました。
もともと欧米では有色人種に対する人種差別はありますが、普段は人種差別は良くないという「理性」で抑えていても自分に直接被害が及ぶかもしれないという状況になると「本音」が出るものです。
イタリアの音楽学校ではアジア系学生の締め出される
イギリスではシンガポール人の留学生がロンドンの路上で暴力をふるわれる
パレスチナ自治区では現地の女性にNPOの日本女性が路上で暴力をふるわれる
フランスのパリ郊外の日本レストランでは「日本人は出て行け」と落書きされる
ドイツのサッカー場で観戦中の日本人団体がコロナ感染の疑いで追い出される
中東、アメリカでも似たようなことが起こっておりこれらは単なる氷山の一角です。
もちろん今回の人種差別行為は現地にいる日本人やアジア系の人たちにとっては外で咳をすることもマスクをすることもはばかれ憂鬱どころか身の危険さえ感じる場合があるでしょう。
目次
なぜ人種差別が起こるか
しかしどうして世界中でこういった人種差別が起こるのでしょうか。
同じコロナウイルスの感染者をたくさん出したイタリア人はヨーロッパで人種差別されないでどうしてアジア系が差別されるのでしょうか。
それはヨーロッパの大航海時代から起こった
15世紀前半〜17世紀半ばまでスペイン、ポルトガルを中心とするヨーロッパの人間が新大陸、新世界の発見があった時期を「大航海時代」と言いますが、この時期に彼らはオーストラリアや北米・中南米を「発見?」したのです。
これらの「新大陸・新世界?」は彼らは武力により現地人を征服し植民地化していったのです。
そしてその植民地支配を正当化し西欧人の優位性を強調するために、
「白人が非白人に文明を与えるのは義務である」と上目線で言い放ったのでした。
それに伴いキリスト教も「輸出」され神父が現地に赴任しキリスト教を広めたのでした。これは現地の人たちをマインドコントロールするために宗教が使われたのです。
当時のローマカトリックでは司祭が「黒人には魂がなく動物と同じである」と断言しました。
19世紀のアメリカでも労働力確保のために奴隷制度が推進され黒人に対し「自然の不平等」という形で人種概念が広まり異人種間の結婚が禁止され隔離政策が進んだのでした。
アメリカの第7代大統領のアンドリュー・ジャクソンも「インディアンは滅ぼされるべき劣等民族である」と演説したとされます。
またアメリカでは日露戦争後には日本人に対する「黄禍論」がありましたし、第2次世界大戦中も日系人に対しては隔離政策をとったのにドイツ人、イタリア人にはその政策は取りませんでした。
さらに先述した新大陸の発見に私が「?」を入れたのは北米・中南米・オーストラリアなどにはそれぞれ先住民がいたので別に人類が「新発見」したわけではないからです。
それを「発見」というのはそれこそ「ヨーロッパ中心主義」による人種差別というものなのです。
教育やマスメディアからのすり込み
ヨーロッパではまだ学校教育でも非ヨーロッパの国々が文明の遅れた国という印象を与える教え方をしているのではないかと思います。
私がイギリスに語学留学した時にドイツ系スイス人から日本の家は紙と木でできているのかと聞かれ唖然としました。「今は江戸時代かよ」と突っ込みたくなりましたが相手がおバカと知っていたので放っておきました。紙というのはおそらく障子(しょうじ)のことでしょうね。
聞けばスイスの教科書では日本の家はそのように紹介されていたそうです。
この話は1980年代前半の日本がエコノミックアニマルと言われていた頃で日本経済の絶頂期で日本製品が海外で飛ぶようん売れていた時期です。それにもかかわらず日本に対してこの程度の知識しかないのかと愕然としたわけです。
そして教育現場において国・地域によりかなり情報格差があると実感したのです。
日本人も白人と黒人であれば余程白人の人相が悪くない限り知らず知らずのうちに白人の方を信用しているのではないでしょうか。
これも完全にすり込みです。戦後日本にもテレビが普及してアメリカのテレビドラマや映画が放映されました。私もアメリカの番組を見てアメリカに憧れたものです。おそらく1960年代のアメリカだったでしょう。アメリカも1960年代が古き良きアメリアの絶頂期でした。
西部劇やホームドラマもよく見ました。しかしそこに登場する人物は白人が中心で黒人はメイド、召使、ギャングばかりだったと記憶しています。
西部劇などではインデァンが常に悪者で白人をナイフで殺してしまうシーンが何度も出てきました。常に白人は正義でインデアンは悪なのです。
さらにスポーツや音楽の世界でも黒人が活躍しているのをテレビでよく見かけました。
そうするとほとんどの日本人は黒人は「ギャング」か「スポーツ選手」か「ミュージシャン」かのいずれかと思っているではないでしょうか。
昔日本で黒人がスーツ姿で歩いていると何か違和感を持ったりしませんでしたか。私は今から30年程前に東京で黒人がビジネススーツをきちんと着こなしているのを見て非常に驚いた記憶があります。
つまり黒人のビジネスマンは想像していなかったのです。
これらはほどんど映像などの偏った情報から来る「すり込み」です。
私たちは知らず知らずのうちに新聞、TVや映画などマスメディアから人種に関してすり込まれているのです。
自己防衛本能としての人種差別
未知のものに対する「警戒心」や「恐怖心」といった人間の本性としての自己防衛本能が働いてしまう場合にも人種差別が起こります。
また人種差別が強まる時期と社会の危機意識が強まる時期とは重なるのです。
コロナウイルスなんてまさに「未知のもの」で「社会の危機意識」の表れですからね。
宗教による人種差別
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教はそれぞれ一神教なのでそれぞれの「神」を認めていません。自分の神が由緒正しい神だというわけです。
その中でもとりわけ過激なのが最近のイスラム教です。
イスラム教では純粋に「コーラン」に従えばイスラム教徒にとって非イスラム教徒は改宗しない限り「敵」であり攻撃対象なのです。
良くも悪くもこれに忠実に従ったイスラム教徒が「イスラム国」を作り一部の若いイスラム教徒から支持されているのです。
これまでのイスラム教国では自国内の社会安定化と海外(欧米)から信用を得るためにいろいろイスラム法を「忖度」して比較的穏健なイスラム教を自国民に教えていました。
しかしインターネットの普及で「コーラン」が誰でも読めるようになると「国家の教え」と「コーランの教え」が異なることを知り「コーランの教え」に従おうとしている人たちが出てきました。これをマスメディアは「過激派」と呼びます。
この過激派が非イスラム教徒に対してジハード(テロ活動)を行っているわけです。
イスラム教徒でない人や国だけでなく同じイスラム教徒でもコーランの教えを絶対化しない「穏健派」までも「敵」にしてしまうわけですから宗教的偏見の塊(かたまり)なわけです。
それに対して世界の非イスラム世界、特に同じく一神教であるキリスト教やユダヤ教を信じる人たちにとってイスラム教は「敵」なのです。
こういった昔からある宗教対立からくる偏見はやがて民族差別、人種差別になっていくのです。
人種差別は無くならない
大航海時代だけでなく現代でも至る所で人種差別は起こっています。
プロサッカー
プロサッカーでも欧州ではアフリカ系やアジア系選手に対する人種差別が後を絶ちません。かられの背景には極右翼が見え隠れしていると言います。
移民のせいで自分たちの仕事が奪われたり環境が悪化したりするという考えを持った人たちです。私もその考えを全面否定するつもりはありませんが、サッカー選手が彼らサポーターの仕事を奪ったわけでもなくより多く稼いでより多くの税金を納めているわけですから過激なサポーターの話には無理があります。
結局は彼らの貧困白人の社会に対する不満のはけ口としてマイナーな移民や有色人種がその対象となるのです。
日本のJリーグでもサポーターによる韓国人選手に対する人種差別が何度かありました。彼らのリアクションは反日的韓国に対する嫌韓なのです。
イギリスのメーガン妃
イギリスのハリー王子のお嫁さんであるメーガン妃も母親がアフリカ系アメリカ人であることから皇族内の身内を含む白人系イギリス人から差別されています。
イギリス国民やイギリスのマスメディアはそれを認めないでしょうが、他国から見れば紛れもない人種差別です。
いろいろ言われるメーガン妃ですがおそらくそう言った人種差別を敏感に感じ取ってカナダへの移住となったのではないでしょうか。
イギリスは階級制が残っている国で労働者階級の連中もかなり社会に対する不満を持っています。フーリガンなんてその典型です。15歳で学校を放り出されスーパーの店員になるしか仕事のない彼らフーリガンの将来なんて何にもないのですから。
日本より移民に寛容で多様性のある社会を持つイギリスですが、結局そのツケをブレグジットという形で払っています。
まとめ
欧米の白人による人種差別は「大航海時代」が始まりというのが定説ですが、歴史を紐解けばもっと前にあるかもしれません。
20世紀になってもドイツ・ナチスのユダヤ人大量虐殺も人種差別ですし、関東大震災の時も確か朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだというデマで多くの朝鮮人が殺さらたそうです。これも日本人の自己防衛本能による人種差別です。
南アフリカのアパルトヘイトやオーストラリアの白豪主義なども有名ですね。
さらにイスラエル人によるパレスチナ地域の占領は、パレスチナ人に対するユダヤ人の迫害であり人種差別です。
人種差別され続けたユダヤ人(イスラエル人)が今度は自分たちが人種差別をしているわけです。
このイスラエル・パレスチナ問題もイギリスというヨーロッパの国の二枚舌外交によって引き起こされた悲劇なのです。
このように人種差別は肌の色の違いだけでなく宗教や文化、そしてその国の国力(経済力・軍事力など)によっても左右されます。
従って残念ながら人種差別は今後もなくならないと言っていいでしょう。
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