社会

「イスラエル 人類史上もっとも厄介な問題」(NHK出版)を読んで

今年早々NHK出版の「イスラエル 人類史上もっとも厄介な問題」という本が発売されました。読みたい本としていずれブックオフで購入しようと思っていたのですが、その内容や価格(定価2,860円)からなかなかブックオフの棚に並びませんでした。

発売から半年後ようやくあるブックオフ店で1冊ポツンと棚にあったのを見つけ即購入。

読み始めるとこれがなかなか手強いのです。

何が手強いのかというとユダヤ教という紀元前からの長い物語から始まる一神教とエルサレムという聖地を共にするキリスト教、イスラム教というまた別の一神教との宗教戦争、さらに新興国アメリカのユダヤ系アメリカ人とイスラエルの関係。これらがゴチャゴチャと絡み合っているからです。

またパレスチナ人とユダヤ人のパレスチナという土地の土着性。一般にユダヤ人がローマ人に迫害され逃れた後にパレスチナ人が住み始めたと学校の歴史で習いましたが、実はパレスチナ人の中にはユダヤ人の祖先も混じっている可能性もありそうなれば現ユダヤ人が旧ユダヤ人を迫害しているということに。この辺になってくると頭の中が私のウォークマンのイヤホンのように絡まってほどけなくなる始末。

一時はこの本を超簡潔にまとめてブログにしようと考えていたのですが頭が混乱するばかりでとても1つのブログには収まりそうにもありません。結局思いついた(思い出した)ことをアトランダムに列記することに。

著者はユダヤ系アメリカ人でダニエル・ソカッチという社会活動家で本書では下記のように紹介されています。

『社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO、「新イスラエル基金(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向にかかわらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外されたマイノリティの利益と、アイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、イスラエルが近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持することなどを目標に掲げて活動している。妻と二人の娘と共にアメリカ、サンフランシスコに在住 。』

人口が1000万人にも満たない小国がなぜこのような強気な武力闘争をしているか、できるかというとやはりそれは大国アメリカの援助があるからです。

ユダヤ系アメリカ人は政治、経済、芸能の世界に多数存在し彼らの発言や経済的援助によってアメリカのイスラエル支援を決定しています。

しかしその一方でユダヤ人も一枚岩ではなくイスラエル在住の一部のイスラエル人(左派)やユダヤ系アメリカ人(特に若い世代)はイスラエルの対パレスチナへの報復戦争に反対しています。

一方のパレスチナ人も一味岩ではありません。パレスチナはガザ地区とヨルダン川西岸地区に分かれており、それぞれガザ地区はハマス、ヨルダン川西岸地区はファタハが実効支配しています。しかしパレスチナはパレスチナ解放機構(PLO)が唯一正当な組織として存在しておりファタハはPLOの主流派ですがハマスはPLOから外れています。

つまりはPLOの制御不能な組織がハマスです。しかしハマス、ファタハ、PLOともに以前から腐敗した組織と言われ各国からの支援金が適切にパレスチナ市民に提供されることはないのです。経済援助を求め来日したこともある故アラファト議長でさえ汚職に塗れていたという話です。

一般の日本人は昔からパレスチナ人に同情的で今回の戦争でもイスラエルに対して批判的ですがどこまでPLOに日本の国税で支援すべきかは疑問が残るところです。

また現在のイスラエルのネタニヤフ政権は非常に右翼的ですのでイスラエル国内でも非難されています。

ハマスというテロ組織が生まれたのも結局イスラエルのこうした超右翼的な政治家の言動によってより過激的になったからでしょう。こういう右翼の政治家がイスラエルには結構多いのです。

たとえばガザ地区にどんどん過激派イスラエル人がどんどん入植しパレスチナ人を彼らの住居から追い出しそのままイスラエル人が住み始めています。これらに対して圧倒的な武力を持つイスラエル人に海外からの支援頼みのパレスチナ人はなす術を持ちません。

これらの行為は明らかに国連決議に違反しているのですがイスラエル政権は黙認しているどころかむしろ奨励しているとさえ思えます。

国連でもイスラエル非難決議をしてもアメリカが否決するのです。これはアメリカにおけるユダヤ人のロビー活動の賜物です。アメリカの政治家は日本の政治家以上に金まみれですから。

さらに厄介なのはアメリカのキリスト教の一つである聖書信仰の福音(ふくいん)派(プロテスタントが多い)です。このキリスト教宗派がアメリカの政界に深く入り込んでイスラエルを後押ししているのです。

このキリスト教原理主義の福音派は「ガザやヨルダン川西岸はイスラエルのもの」と明確に発言しているのです。

なぜ福音派がイスラエルをこれほど強弁に支持しているのかと言えば、福音派は聖書を一字一句正しいとする聖書信仰を持ち、彼らにとっては新約聖書だけでなく旧約聖書も聖典なので旧約聖書をよりどころにしているユダヤ教、その国家であるイスラエルを強く支持しているのです。

アメリカの成人の 4人に1人はこの福音派というデータもありこれもアメリカ政治に強く影響を及ぼしています。特にリベラルな民主党ではなく保守的な共和党に肩入れしておりキリスト教保守とも言われています。

私のような宗教に疎い人間には到底イスラエルの世界を理解することは困難ですが、日本的な常識に照らし合わせればそもそも一つの神を絶対視し他の神を認めない一神教は甚だ傲慢と言わざるを得ません。

また日本の政府はこのイスラエルのパレスチナ侵攻に対して得意の無言の姿勢をとっていますが、イスラエルを支持するアメリカはもとよりユダヤ教を迫害して来たキリスト教を信仰するヨーロッカ諸国もその罪の意識が心のどこかにありイスラエルを甘やかす結果となっているのです。

それでは日本政府はどうすればいいのでしょうか。私はやはり1993年の「オスロ合意」に立ち返ることを世界に向かって表明することでしょう。詳しくは下記参照願います。

参考記事:『ナチス・ドイツになってしまったイスラエルの過激派ユダヤ人

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